スピリッツが憲法特集 人気漫画誌の政治的な意図は

    「この国を考えるきっかけに」

    7月4日に発売された小学館の漫画週刊誌「スピリッツ」(32号)が、日本国憲法の特集を組んだ。

    発行されたのは、参院選まであと1週間と迫った月曜日。「公布から70年、改正が争点として浮上する中、漫画誌史上初の試みです」(編集部)というけれど、なんで漫画雑誌が「憲法」だったのか?

    この国を考えるきっかけに

    「憲法って、日本の根っこにある、この国をつくる設計図ですよね。それに触れてもらうことで、普段はなかなか意識していない日本について、考えてほしいと思いました」

    スピリッツの坪内崇編集長はBuzzFeed Newsの取材にそう答える。

    「選挙権を持った18歳の人、初めて選挙に行く20代の人、そして、久々真面目に選挙に行ってみようという30代の人。いろんな若い人たちが、こういうものを手に取れば、きっと考えるきっかけにもなるはずです」

    その言葉を示すように、特集号の冒頭、「スピリッツ イン ニッポン」と題されたページには、こんなことが書かれている。

    日本と日本人の暮らしの大切な約束事が決められているのが憲法です。

    今年は憲法公布から70年、参院選では憲法改正が争点の一つとして取りざたされています。

    "私たちの本"ーー憲法をこの機会に読んでみませんか?

    イラストに導かれ、一度くらいは憲法を全て読んだという経験をしてみませんか?

    日本をもっと考えてみませんか?

    作家13人が描いた「日本の情景」

    特集号の目玉は、憲法全文が載っている「Our Book」という付録だ。スピリッツが抱える連載陣13人による「日本の情景」が書き下ろされている。

    たとえば、憲法25条の条文が作品のタイトルになっている「健康で文化的な最低限度の生活」の柏木ハルコさんは「群衆(モブ)」を。「おかゆネコ」を連載中の吉田戦車さんは、「東日本大震災で被害にあった海辺の町」を書き下ろした。

    それ以外にも、NMB48やLinQなど、全国の18歳アイドルたちが憲法や選挙権を語るグラビアや、ノンフィクションライターの神田憲行氏が憲法の基本や改正について解説する「どこからどう読んでいいのか、わからないアナタへ」もある。

    改憲でも護憲でもなく

    改正の是非を問うわけではない。「政治的意図はありません」と、坪内編集長は強調する。

    「もちろん、作っている僕ら個人にも、作家さんにも読者の方にも何かしら、いろんな考えはあると思います。偏りがないなんて、ないのだから」

    「でも、スピリッツはエンターテイメントコミック誌。改憲でも護憲でも、右でも左でもない、というスタンスです」

    あくまで「政治を考えてほしい」わけではないという。「日本ってこんな感じの国なんですよ、どう思う?」という疑問を、憲法を通じて投げかける特集だ。

    憲法は「私たちの本」

    憲法が特集に選ばれたのは、今年に入ってからだ。

    これまで特集を組んでこなかったスピリッツ。新たな取り組みとして始めようと、編集部の25人全員で会議を開いた際、「憲法問題がニュースになるなか、スピリッツなら憲法を読んでもらう良いきっかけを作れるのでは」と、寺澤広蔵副編集長が発案した。

    「良いんじゃないか、すぐやろう」。憲法なら参院選のタイミングに合わせようと、ゴールデンウィーク前から作業に取り掛かった。編集部でみんなで憲法を一から読み直したという。

    坪内さんは「意外にいいこと書いてあるなあと感じました。たとえば『検閲がダメ』とか。憲法のおかげで割と俺たち自由にできているんだな、とか」と笑う。

    「いままでは高校時代に試験対策で読んだだけで、よく分かっていなかった。でも、改めて読むと、結婚とか引越しとか、子どもの教育とか。身近なことについて触れられている。いろんな人が、いろんな感じ方をする本だと思います」

    一方の寺澤副編集長は、こう語る。

    「憲法って、生活全般について書いてある本なんです。私たちの生活にかかわっているいろいろな権利を保障してくれている。だから、付録には『Our Book』(私たちの本)と書いてあるんですよ」